令和6年11月度　御報恩御講「法華取要抄」

令和6年11月度　御報恩御講　拝読御書

法華取要抄(ほっけしゅようしょう)　文永十一（1274）年5月24日　聖寿53歳

「諸病の中には法華経を謗ずるが第一の重病なり。諸薬の中に南無妙法蓮華経第一の良薬なり。此（こ）の一閻浮提（いちえんぶだい）は縦広七千（じゅうおうしちせん）由善那八万（ゆぜんなはちまん）の国之有り。正像（しょうぞう）二千年の間未だ広宣流布せざる法華経を当世に当たって流布せしめずんば釈尊は大妄語（だいもうご）の仏、多宝仏（たほうぶつ）の証明は泡沫に同じく、十方分身（じっぽうぶんしん）の仏の助舌（じょぜつ）も芭蕉（ばしょう）の如くならん。」（御書735㌻13行目～16行目）

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【背景・概要】

　本抄は、文永十一（1274）年5月24日日蓮大聖人様53歳の御時、身延入山直後に御述作され、下総（千葉県）の富木常忍に与えられた御書です。本門の本尊・戒壇・題目という三大秘法の名目が、初めて整足して明かされた重要書であり、総本山第二祖日興上人により御書十大部（※大聖人様の御書中、最も重要な十編（①唱法華題目抄、②立正安国論、③開目抄、④観心本尊抄、⑤撰時抄、⑥報恩抄、⑦法華取要抄、⑧㈣信五品抄、⑨下山御消息、⑩本尊問答抄）を日興上人が選定された）の一つに選定されています。

　本抄の題号（法華取要抄）について、総本山第二十六世日寛上人『法華取要抄文段』で「一代経の中には但法華経、法華経の中には但肝要を取る。故に『法華取要抄』と名づくるなり」（御書文段497㌻）と仰せられ、また内容について、「当抄の大意、略して三節あり。初めに一代諸経の勝劣を明かし、次に今経所被の時機を明かし、三に末法流布の大法を明かす」（同㌻）と御教示されています。

　従って本抄の大意は、一に一代諸経中、法華経が景勝であること、二に法華経の真の目的は滅後末法、中でも特に日蓮大聖人様のためであること、三に末法流通の大法は法華経の肝心たる三大秘宝の南無妙法蓮華経であること。となります。

　本日拝読の箇所は第二段にあり、妙法蓮華経こそ第一の良薬であり、これを大聖人様が末法に広宣流布することを御明示されています。

【御文拝読】

諸病の中には法華経を謗ずるが第一の重病なり。諸薬の中に南無妙法蓮華経第一の良薬なり。

〔語句の解説〕

・法華経を謗ずる…正しい法である法華経に随わず背くこと・謗法＝誹謗正法。

〔通　釈〕

　諸病の中には法華経を誹謗することが第一の重病である。諸薬の中では南無妙法蓮華経が第一の良薬である。

〔解　釈〕

　ここでは、仏様が御誕生あそばす第一番の所以・理由であり、仏様の説かれた教えの中で唯一最大の正法たる法華経・妙法蓮華経を誹謗する行為がいかなるかを、病気に例えて、重病となる行為であると示されています。

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【御文拝読】

此（こ）の一閻浮提（いちえんぶだい）は縦広七千（じゅうおうしちせん）由善那八万（ゆぜんなはちまん）の国之有り。正像（しょうぞう）二千年の間未だ広宣流布せざる法華経を当世に当たって流布せしめずんば釈尊は大妄語（だいもうご）の仏、多宝仏（たほうぶつ）の証明は泡沫に同じく、十方分身（じっぽうぶんしん）の仏の助舌（じょぜつ）も芭蕉（ばしょう）の如くならん。

〔語句の解説〕

・一閻浮提…仏教の世界観で、人間が住む世界のこと。閻浮提、南閻浮提ともいう。

・由善那…古代インドにおける距離の単位で、「由旬」に同じ。一由旬＝約15キロ。

・正像二千年…正法時代と像法時代のそれぞれ一千年間をいう。正法時代とは釈尊滅後一千年間をいい、釈尊の仏法が迦葉（かしょう）等によって正しく伝えられ、それを民衆が真面目に修行することにより成仏ができた時代。像法時代とは正法時代後の一千年間をいい、民衆の仏法に対する素養は正法時代よりは劣るが、天台大師等による仏教の解釈や塔寺の建立等を通じて仏法の利益が伝えられた時代。

・広宣流布…正しい法・教えを広く宣（の）べ流布させること。

・十方分身の仏…法華経『如来神力品』第二十一に「諸仏も、亦複（またまた）是（かく）の如く、広長舌を出し、無量の光を放ちたもう」（法華経510㌻）とあるように、十方世界から集った分身諸仏が、釈尊と同様の広長舌相を示して法華経が真実であることを証明したことを指す。釈尊の説法を助けるためにこの相を示したので「助舌」という。

・芭蕉…バショウ科の植物。葉は太い繊維質で形成され、葉脈によって裂けやすい。

〔通　釈〕

　この一閻浮提は縦横が七千由旬あり、その中に八万の国がある。正法・像法二千年の間未だ広宣流布していない法華経を、この末法の世に当たって流布させなければ、釈尊は大妄語の仏ということになり、多宝仏の証明は水の泡と同じになってしまい、十方分身の諸仏の舌相も、芭蕉の葉のようにもろく破れてしまうであろう。

〔解　釈〕

　ここでは、我々が住む世界が南閻浮提に存し、面積が縦横に七千由旬＝十万五千㌔、その中に八万の国があると明かされ、釈尊は法華経『薬王菩薩本事品第二十三』で「我が滅後の後、後の五百歳の中に、閻浮提に広宣流布して、断絶せしめること無けん」（法華経539㌻）と、末法時代に正しい法が一閻浮提に広宣流布することを予言され、その予言を多宝仏・十方分身の諸仏も、その予言が必ず叶う旨を証明されています。しかし、もし広宣流布が叶わなければ、釈尊は大妄語＝大うそつきとなり、多宝仏等の証明も芭蕉の裂けやすい葉の如くの証明である。と示されています。

【御妙判を拝して】

　拝読の御妙判は、「諸病の中には法華経を謗ずるが第一の重病なり」と仰せられるとおり、妙法蓮華経の法華経を謗る行為は自らが重病を犯すような行為であると説かれ、同時に末法時代には釈尊の予言通り、妙法蓮華経が必ず全世界に広宣流布していくことを御本仏様として予言されています。また、その実現のために大聖人様は「只妙法蓮華経の七字五字を日本国の一切衆生の口に入れんとはげむ計りなり」（諌暁八幡抄・御書1539）」と、当時念仏宗・真言宗が強く蔓延る中、大聖人様御自らが大折伏戦に努められたのです。

　また、この御精神を第二祖日興上人・第三祖日目上人をはじめ御歴代御法主上人猊下が御継ぎあそばされ、時々に大折伏戦に励まれています。

　本日、日目上人御正当会・目師会に当たり、日目上人は御老齢にもかかわらず、国家に対して大折伏を行うため、天奏に努められ、しかし美濃の垂井にて御遷化されておりますが、我ら大聖人様の信心をする僧俗は、この日目上人の御振舞を改めて拝しなおし、自身のできうる最大の努力を持って信心に励むことを日目上人の御正当会を迎えるに際し、御本尊様にお誓い申し上げることが必要であると思います。

　本年も残り一ヶ月半、悔いなく今年を終えるために、今一度この大聖人様の御精神を拝しなおし、そして自行化他の信心に精一杯励行していきましょう。

以上