令和7年9月度 御報恩御講 拝読御書
令和7年9月度 御報恩御講 拝読御書
『祈祷抄(きとうしょう)』
文永(ぶんえい)9(1272)年 聖寿51歳
月を待つまでは灯を憑(たの)むべし。宝珠のなき処には金銀も宝なり。白烏(はくう)の恩をば黒烏(こくう)に報ずべし。聖僧の恩をば凡僧に報ずべし。とくとく利生(りしょう)をさづけ給へと強盛に申すならば、いかでか祈りのかな(叶)はざるべき。
(御書 630㌻13行目〜15行目)
【背景・概要】
本抄は、文永9(1272)年、日蓮大聖人様御年51歳の時に佐渡において認められ、最蓮房(※)に与えられた御消息と考えられています。
内容は、はじめに真言・天台等の諸宗の祈りには真の利益がないことを明かされています。次に、菩薩・二乗(声聞・縁覚)・諸天・竜女・提婆達多等の成仏は法華経のみによって得られることから、菩薩等は、その報恩のために法華経の行者を必ず守護する旨を明かされています。そして、法華経の行者の祈りは必ず叶うと断言され、更に強盛な信心を勧めています。また、謗法による祈禱が悪果を招く実例として、承久の乱において後鳥羽上皇が、天台・真言等の座主・高僧に調伏祈禱(※)を行わせたにもかかわらず戦いに敗れ、上皇自身が隠岐島へ配流となったことを挙げられて、天台密教・真言密教の邪義を強く破折されています。
【語句の解説】
・最蓮房…最蓮房はかつて天台宗・比叡山延暦寺で修学に励んだ学僧でしたが、佐渡において大聖人様に帰伏した。その後は大聖人様から重要な法門書を賜っています。
・調伏祈禱…密教等が、悪魔や怨念を降伏させ退散させるためにおこなう祈禱(護摩など)
・宝珠のなき処には金銀も宝なり…宝珠とは宝の玉のこと。宝珠がないときは、それより価値の劣る金銀であっても宝となるとの意。
・白烏に恩をば黒烏に報ずるべし…中国天台宗の祖・天台大師の弟子・章安大師の『観心論疏(かんじんろんしょ)』に説かれる説話で、「昔、ある国の王が狩りの途中、毒蛇に襲われそうになった際、白い烏(からす)・白烏がその危険を知らせて王の命を救った。後に王はこの時の白烏に恩返しをしようと所在を探したが見つけることができず、代わりに黒い烏(からす)・黒烏に施しを与えて白烏の恩に報いた」と示されている。この説話を大聖人様は、白い烏(白烏)を「法華経を説いた釈尊」とし、黒い烏(黒烏)を「法華経によって成仏の境界を得た諸菩薩・人天・八部等」としている。
・利生…仏が衆生を利益すること。また、仏が衆生を救うこと。
【通 釈】
月が出るのを待つ間は灯火を頼りとする。宝珠のないところでは金銀も宝となる。白烏に恩を受けた者が黒烏にその恩を返したように、聖僧から受けた恩を凡僧に報ずるべきである。速やかに利生を授け給えと強盛に申すならば、どうして祈りの叶わないことがあろうか。
【御妙判を拝して】
拝読の御妙判では、先ず、仏教と外道(仏教以外の教え)の差別、法華経と法華経以外の教えの差別を明かされています。仏教と外道(仏教以外の教え)の差別では、月を外道(仏教以前の教え)、灯火(仏教)が説かれる以前では、月(外道)もありがたい教えであったが、灯火(仏教)が出れば、月(外道の教え)は必要なくなると仰せられています。また法華経と法華経以外の差別では、宝珠を法華経、金銀を法華経以外の教えとされ、宝珠(法華経)がないところでは金銀(法華経以外の教え)も値打ちがあるが、宝珠(法華経)が出れば、当然金銀(法華経以外の教え)よりも値打ちがあると仰せられています。これらは差別と言い相対とも言い、ここでは法華経こそ最も尊い教えを差別をもって明かされています。
次に、我等日蓮正宗の僧俗は、深い因縁があって、大聖人様の本門戒壇の大御本尊様に帰依・信心することができていますが、この信心ができているのには、必ず折伏親がおり、その折伏親に対し恩を報ずることが大事であると明かされ、その恩に報ずる方法とは、信心ができない人への下種・折伏であると仰せられています。
以上の旨を大聖人様は、中国天台宗の章安大師の『観心論疏』を引かれ、「白烏の恩をば黒烏に報ずべし」と仰せられています。この御文について総本山第六十六世日達上人は「大聖人様に限らず、われわれを導いて、この南無妙法蓮華経につかせてくれた人は皆白烏である。その白烏に対して自分は恩を報ずることは中々できやしない(中略)どうして報じるかというと、同じく自分もまた謗法の人びとに、この妙法蓮華経を下種し、折伏して、教化し始めて、その恩を報じることができるということなんです」(達全1-2-162)と御解釈されています。
最後に、上記の恩を報ぜられるように、信心ができていない人が仏様の利生・功徳が得られるように強盛に努めていけば、その祈りは必ず叶うと明かされています。祈祷抄に「大地はさゝばはずるゝとも、虚空をつなぐ者はありとも、潮のみちひぬ事はありとも、日は西より出づるとも、法華経の行者の祈りのかなはぬ事はあるべからず」(御書630㌻)と、もし大地を指さしてそれが外れることがあっても、また大空をヒモで繋ぐことができたとしても、潮の満ち潮・引き潮がなくなったとしても、太陽が西から昇ることがあったとしても、絶対に法華経の行者の祈りが叶わないことはないと断言されています。
拝読御文を拝し、我々はその御指南の聖意を深く拝し、そしてその御指南の聖意のままに正直に励行していくことが、日蓮正宗の信仰者であり、日蓮大聖人様の真の信徒であり、その者が真の御仏智を得られることを決して忘れず、大聖人様・御法主上人猊下様の御教えの正直に仏道修行に励んでいき、そして自身の罪障を一つ一つ消滅し、大願たる成仏得道が得られるよう、努めていきましょう。
以上
秋季彼岸会 9月21日(日) 午後1時・午後7時
9月23日(火・祝日) 午後1時
宗祖日蓮大聖人御正当会(御会式)
10月18日(土) 午後2時
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